北朝鮮が3月19日に平壌の訓練基地で実施した敵の防御線を突破し、戦果を拡大するための戦車と歩兵による協同作戦戦術演習では無人攻撃機も登場していた。
北朝鮮は攻撃型無人機や自爆型無人機の開発・配備を急いでいる。金正恩(キム・ジョンウン)総書記自らが2021年1月に開催された第8回労働党大会で500km前方の標的を精密に偵察できる無人偵察機と無人攻撃機の開発を2025年までに完了するよう指示していた。
特に、北朝鮮が2024年10月にウクライナに侵攻したロシアを支援するため派遣した特殊部隊の兵士が戦場で無人機攻撃を受け、多くの犠牲者を出した苦い経験から、無人機の重要性を痛感したとみられる。
無人機そのものは北朝鮮は早くから開発に着手していた。1994年にはシリアからソ連製無人偵察機Tu-143「Reys」を確保し、化学兵器を搭載可能な武装ドローンに改造した。2001年にはロシアから「プチェラ-1T」を購入し、非武装地帯の偵察に活用した。2010年に西部戦線で韓国軍が未確認飛行物体を発見したが、それがこの「プチェラ-1T」であった。
北朝鮮が無人機保有を初めて公開したのは、金正恩政権が発足した2012年である。同年1月27日、金総書記は初の視察として西部地区の航空クラブ選手らの模範競技を参観したが、朝鮮中央テレビの映像には、円筒状の胴体にプロペラが付いた全長約2メートルの無人機が映っていた。
翌2013年3月、朝鮮中央通信は「金総書記が無人攻撃機と対空ミサイルの発射訓練を指導した」として写真を公開した。写真には車両に搭載された3機の無人攻撃機が確認された。同年3月と4月には、南北軍事境界線に隣接する坡州市の山中や西海の島で墜落した北朝鮮の無人機が相次いで発見された。
坡州で墜落した無人機は、韓国北部およびソウル上空で計193枚の写真を撮影していたことが判明した。いずれも偵察用無人機であり、写真には大統領執務室がある青瓦台本館も含まれていた。ただし、その解像度は衛星画像サービス「グーグルアース」と同程度と低評価された。
この時から9年後の2022年12月26日、北朝鮮の無人機5機が韓国領空を侵犯する事件が発生した。このうち1機はソウル上空を飛行し、約3時間にわたり韓国内に侵入していた。無人機は翼幅約2メートルと小型で、探知自体が困難であった。韓国国防研究院が「無人機による炭疽菌散布が行われた場合、ソウル市民の半数が死傷する可能性がある」との報告書を公表したこともあり、国内に大きな衝撃が走った。
自爆攻撃用無人機が初めてお披露目されたのは2015年10月の労働党創建70周年軍事パレードで、発射台に搭載され登場していたが、2023年7月27日、朝鮮戦争休戦協定日に合わせて公開された「武装装備展示会2023」では、米軍の高高度無人偵察機RQ-4「グローバルホーク」に類似した「セッピョル(明星4型)」及び米軍の無人攻撃MQ-9「リーパー」そっくりの無人攻撃機「セッピョル9型」が展示されていた。
「セッピョル4型」は翼幅約20メートルと推定され、ミサイルを搭載可能とみられる。また、「セッピョル9型」も同様に複数のミサイルを搭載し、デモンストレーションでは対戦車ミサイルおよび滑空型爆弾の運用が確認された。滑空型爆弾とは投下後に翼で滑空し目標に命中する兵器である。
翌2024年8月24日、金総書記は国防科学院を視察し、開発中の攻撃型無人機につを視察したが、「朝鮮中央通信」によると、金総書記は戦略偵察型および多目的攻撃型に加え、戦術部隊が運用する自爆型無人機のさらなる開発・生産の必要性を強調した。
同年11月には無人航空技術連合体が生産した自爆型無人機の性能試験が実施され、大量生産が指示された。また、「国防発展2024」では段ボール製とみられる無人機も確認され注目を集めた。
北朝鮮は今後、偵察型や自爆型に加え、AIを搭載した無人機の開発も目指しているとみられる。そのため、探知および電子戦に関する研究機関を新設した。さらに、ロシアからの技術供与やウクライナ戦争の戦訓を踏まえ、「現代戦」への対応を加速させている可能性もある。
核とミサイルだけでなく、今後ドローンも日韓にとって大きな脅威となる日が来るかもしれない。